同額の給与でも、「手取りに差が生まれる」のはなぜか?

  • 文:川畑明美

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友人や同僚と同じくらいの給料なのになぜか手取り額が違う。そんな経験はないだろうか。なぜ手取りが違うのかを解説しよう。ecep-bg-istock

給与明細を同僚と比較したことがあるだろうか。同じ額面でも手取りが違うことがある。「同僚と支給額が同程度でも、社会保険料や所得税・住民税額がどうして違うのですか?」とか「厚生年金の支払額が標準報酬月額よりも高額な気がする……。」というようなご相談をいただくこともある。


支給額が同じでも税金の控除が多ければ、手取りは多くなるし所得税や住民税も少なくなる。社会保険料は都道府県によって違う。同じ会社でも住んでいる県が違えば、金額は変わるのだ。また会社から遠いところに住んでいて、交通費が高額になると社会保険料も高くなる。「厚生年金の支払額が標準報酬月額よりも高額な気がする」のは、遠方に住んでいて交通費が高いからかもしれない。


「交通費は会社持ちだから高くても平気」と考えがちだが、実は社会保険料の負担が増えているかもしれない。1カ月の定期代が3~4万円もするような人なら、交通費の安い路線や地域に引っ越すことができれば、社会保険料のランクを下げられる可能性がある。

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社会保険と税金では、含める手当に違いが

社会保険料は、固定給(基本給、通勤手当、家族手当等の合計)の額を保険料額表にあてはめ、「標準報酬月額」を求めて標準報酬月額に保険料率を乗じて算出する。知らないと手取り額が少なくなるので、しっかり理解しよう。通勤手当はそのまま定期代などに消えるお金で、税金もかからない。それなのに社会保険料の計算に入っているのはちょっとヘンな気もするが、この点が税金と社会保険の考え方の違いなのだ。


給料の手取りを増やすには、控除額を多くすることだ。控除額を増やすには、扶養家族が増えると大きく変わる。扶養している親族1人あたり38万円を所得から控除できる。所得とは、「収入」から「必要経費」を引いて残った額のこと。一般的な年収ならば1人扶養家族が増えれば、住民税と合わせて7万1000円ほど節税になる。しかも所得税率が高くなれば、つまり年収の高い人ほど大きく節税ができるのだ。

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年金を受給中の親も扶養に

例えば老人扶養親族の場合、70歳以上で同居していない場合でも48万円の控除となる。同居していれば、58万円だ。病気で入院しているなどの理由で納税者と別居となり、その期間が1年以上の長期にわたるものであっても、同居として扱うことができる。年金を受給している親でも一定の条件を満たしていれば扶養家族に入れることが可能だ。扶養家族にすることで、所得税や健康保険料などでのメリットもあるが、逆にデメリットや注意点もある。


親が扶養家族になった場合、税法については扶養者側には節税メリットがあり、健康保険については親の保険料負担がなくなるという効果がある。一方、親を扶養に入れるデメリットは、親が扶養に入ると、高額療養費制度の自己負担限度額が高くなることがあるということだ。扶養に入ると扶養者である子どもの収入が基準に入るため自己負担限度額が増えてしまうのだ。

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給与明細は毎月チェックすべし

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給与明細をもらったら、手取り額だけ確認してポイと捨てていないだろうか? 給料から社会保険や税金がどれだけ引かれているのか確認して欲しい。damircudic-istock

支給されたお給料から差し引かれる金額をチェックしているだろうか。毎月の給与明細をよく見てみよう。給与の総支給額からは、保険料や税金が差し引かれる。その引かれる金額は、給与明細の控除欄に記載がある。これが給与計算を複雑にしている原因の一つであると同時に、間違えやすいポイントでもあったりする。給与明細の控除欄には、下記金額が記載されている。


・健康保険料:国民健康保険の費用。9月から翌年8月まで同じ金額。

・厚生年金保険料:厚生年金の費用。9月から翌年8月まで同じ金額。

・雇用保険料:雇用保険の費用。毎月の賃金の総額に雇用保険料率をかけるため毎月変わる。

・所得税:国に納める税金。収入などにより異なる。

・住民税:市区町村に納める税金。収入などにより異なる。

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給料の何が課税になるのか

前述の他に40歳になると介護保険料も差し引かれる。健康保険料や介護保険、厚生年金料は、9月または10月の給与明細で新しい年度のものに変わる。ただし、例外があって固定給に大きな変動があったときや、少し前に育休復帰した方などは、9月でなくても額が変わることがあるので注意したいところだ。


所得税は個人の所得によって支払う税金のこと。課税対象は、通勤手当を除いた給与収入になる。役職手当や住宅手当、家族手当もあれば課税対象だ。もちろん残業代である時間外手当も課税される。計算は1月~12月までの1年間の所得をもとに、だいたいの金額を毎月引いていく。最終的には、年末調整で正しく計算しなおし、過不足を調整する。

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お金に向きあわない人が量産される要因は?

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源泉徴収制度は、軍事費用を効率的に徴収するための仕組みだった?! 見本にしたのはナチスドイツだった。sefa ozel-stock

年末調整の計算の結果は、源泉徴収票を見ればわかる。ところが源泉徴収票の見方がわからない方が実に多い。そういう人ほど「お金のことに向き合ってこなかった」という。それは、そもそも「源泉徴収制度」を採用しているからかもしれない。源泉徴収とは、所得税や給与や報酬などから支払いをする前に控除することだ。控除とは「一定の金額を差し引く」という意味だ。源泉徴収制度は、軍事費用を効率的に徴収するために導入されたと言われている。


見本にしたのは、ナチスドイツだった。戦後になっても、税金を効率的に徴収できるという理由で廃止されることなく、いままで続いている。年末調整が始まったのは、昭和22年から。雇用主が給与所得者に代わって年末に扶養親族などの所得控除を計算して税額の精算手続きをする。


この制度は、税務署の負担を少なくするためにスタートしたものだ。この年末調整があるため、個々人で確定申告する必要はない。税金の計算をしなくて良いので面倒がなくていい! と、考える人ほどお金に向き合っていないのかもしれない。筆者は、この源泉徴収制度と年末調整があるため、税金に無頓着だったり、税の知識が少なすぎるのだと感じる。

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確定申告することで税金と向き合う

筆者が投資をはじめた頃は、確定申告は必須だった。最初に始めた頃は、特定口座もなかったので自分で税金の計算をしたものだ。面倒ではあったが、自分の投資の利益を計算することで、効率よく利益が出せているか、わかるようにもなった。否が応にも、税金と向き合うことでお金に真剣に向き合えるようになるのだ。


そもそも確定申告は、税金を納めるというよりも税金を還付してもらうために、することが多い。お金に向き合わないということは、汗水たらして稼いだお金を大切に扱っていないということと同じだ。税金を納め過ぎた場合でも誰も教えてくれる人はいない。

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【執筆者】
川畑明美●ファイナンシャルプランナー 「私立中学に行きたいと」子どもに言われてから、お金に向き合い赤字家計からたった6年で2000万円を貯蓄した経験をもとに家計管理と資産運用を教えている。HP:https://www.akemikawabata.com/

同額の給与でも、「手取りに差が生まれる」のはなぜか?

  • 文:川畑明美

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